隙間のホコリ

リリシズム、エモーショナリズム、ネガティブ。

いつか来るその日のために

 

傘を忘れて駅前で立ちすくむ
次々と傘を持つ人たちに追い抜かれていく


家路を急ぐ理由がある訳がなかった
ガラス越しに映る自分の顔を見ている


今日は何か一つでも成し遂げただろうか
一歩でも前に進んだんだろうか


自分にしか出来ないことなんてないけど
自分に出来ることは精一杯やったんだろうか

 

(引用:不可思議/wonderboy / いつか来るその日のために ラブリー•ラビリンス)

 

 

 

彼の生きた挙動が残っている。

 

何年か前の今日に亡くなったらしい。

 

この人に出会ったのは、2年前程前。

 

彼の言葉から生きることの素晴らしさ、そして、彼がこの世にはいない事実を同時に知った。

 

 

不可思議/wonderboy。

ポエトリーラッパー。

いつも勇気をくれる、私の愛してやまない表現者

 

 

 

「生きる」ということ。

 

この行為と向き合うようになったのは、紛れもなく彼の音楽に影響されている。

 

だって、一番「生きている」人が「死んでいる」のだから。

 

生きるって何だろう。

 

ご飯を食べたいって感じること。

 

好きな人と話したいって思うこと。

 

照りつける太陽が眩しいって思うこと。

 

明日の仕事が嫌だって思うこと。

 

そんな当たり前のことを、一生懸命に受け入れて、一生懸命に叫ぶこと。

 

この世にある全てを享受すること、そして、自分に、「生きる」ことに本気で向き合うこと。

 

そんな姿を、画面の中で見た。

 

彼は間違いなく死んでいるのに、生きていた。

 

 

止まらない涙と同時に、溢れた感情。

 

私も精一杯、生きたい。

 

 

2019年。

 

一般的に言われる「社会」という海に投げ出され、浮き輪も無いし、上手に泳げないから、溺れそうなんだ。

 

私よりもずーっと上手く泳ぐ人もいるし、ボートになんか乗って楽に荒波を乗り越えていく人もいるし、もう小さな島に上陸している人だっているんだよ。

 

でもさ、でもさ、足掻いてももがいて、精一杯生きたいんだよ。

 

溺れそうで、もう辛くて、でも、生きたいんだ。

 

人生とか、幸せとか、分かんないことが多いけど、

そういう類のものは精一杯、生きなきゃ分からない気がするんだ。

 

精一杯、生きたい。

 

 

いつか来るその日のために。

 

 

 R.I.P. 不可思議/wonderboy。

 

 

 

 

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不可思議/wonderboy / いつか来るその日のために

(ラブリー•ラビリンス)

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傘を忘れて駅前で立ちすくむ
次々と傘を持つ人たちに追い抜かれていく
家路を急ぐ理由がある訳がなかった
ガラス越しに映る自分の顔を見ている
今日は何か一つでも成し遂げただろうか
一歩でも前に進んだんだろうか
自分にしか出来ないことなんてないけど
自分に出来ることは精一杯やったんだろうか
今の自分は一体どのへんにいるのか
こういう時に携帯やネットは少しも役に立たない
自分の居場所を誰かに聞くことはできない
どうやら雨脚は強くなっているようだった

日々の螺旋階段の途中で振り返ると
そこには一昔前の自分がいる
あの頃の俺はとても必死そうに見える
数年後の俺は今の俺をどんな風に見るだろう
そんな風に毎日ひとつずつでいいから
ブロックを積み上げ、かけのぼっていつかは
あの月まで行くってのは無理だとしても
そこから見える景色はきっと悪くないだろう
それにしても時間が過ぎるのは早いから
はるか遠くに見えるオアシスがたとえ
蜃気楼だとしてももう迷う暇はないよなあ
待ってろ未来、すぐに行く

 

あの日投げた小石の波紋はいつの間にか
ゆっくりと広がり対岸へ届いた
驚いたことに揺れる水面に映るのは
他でもない未来の自分だった
さざ波に乗って上流から下流
手作りの笹船は時に迷いながらも
ゆっくりと確実に進むことをやめない
もうすぐ海が見えるはずだ

 

旅の途中で疲れ切って座り込む
しばらくすると見知らぬ人がやってきて
どこから来たのかと屈託なく尋ねる
警戒はしたが何の心配もなかった
他愛ない会話とくだらないジョークで
いつの間にかバックパックは思い出でいっぱいだ
人と人が繋がるのはいつだって一瞬
サンキュー、これでまた歩き出せる

 

色褪せる記憶に焦ることはもうない
大事なことは全部書き留めてあるから
誰が何と言おうと戸惑うことはもうない
この先に必ず待ってくれる人がいるから
もう無理だと思う瞬間にこそヒントがあり
必ず次に進むべき一歩があった
そんなことを俺は最近になって知った
今思えば何の心配もなかった

 

あの日書いた言葉の断片はいつの間にか
ゆっくりと時を越えあなたへ届いていた
何気なくあなたがそれを口ずさむたび
言葉は何度も生まれ変わりあなたの
当たり前の世界を新しく彩る
時には冷え切った指先をほぐして
夜明けまでを共にするってそんなこと
そろそろ俺は信じ始めている

 

あの日投げた小石の波紋はいつの間にか
ゆっくりと広がり対岸へ届いた
驚いたことに揺れる水面に映るのは
他でもない未来の自分だった
さざ波に乗って上流から下流
手作りの笹船は時に迷いながらも
ゆっくりと確実に進むことをやめない
もうすぐ海が見えるはずだ

 

カレンダーをめくり、運命はめぐり
目を瞑れば広がる無限に続く銀河
あれほどまでに遠かった星たちが今では
随分と近い 手が届きそうだ
そんなことを夢見て今日も眠りにつく
今日よりも明日が美しいとは限らない
でも吹き続ける風が岩の形を変えることがあるなら
なんて思えばまだやれそうだ

引用:不可思議/wonderboy / いつか来るその日のために

(ラブリー•ラビリンス)