ハイブリッドレインボウ
一番仲が良かった同期が鬱になる一歩手前で、昨日退職届けを出してきた。
入社して、半年と1日が過ぎた日の午後だった。
4月、私に壮大な理想を語ってくれた。
月日を重ねるうちに、理想と現実のギャップは乖離を続けた。
9月の最初の3連休の次の日だったと思う。
「辞めたい」
9月はほぼ毎日22時に退社していた。
「今日も定時帰り?」「当たり前やん」
と、笑いながら長時間労働を皮肉った会話を続ける日々。
最寄り駅から、敢えて一駅の距離を歩く。
途中で適当に飯を食って、今置かれている絶望的な状況、そして、いつか来ると信じている夢見る未来について語り合う。
そんな毎日から突然零れた一言。
そこからは早かった。
あっけなかった。
やりたくないことをやらされ、結果が出ずに上司からは詰められ、苦労は美徳、気味の悪い宗教的な企業文化も相まって、限界が来ていた。そこに、理想と現実とギャップ。
彼は精神から体調を崩した。
鬱病になる一歩手前だった。
朝起きたら、下痢が止まらず出社することができなくなったらしい。
出社しても、社内の空間に耐えられず頭痛を発症。
それでは、仕事もままならず、膨大なタスクと達成不可能な目標に殺され、22時退社。
何が「成長」なのだろう。何のための「成長」なのだろう。
分からない。
しかし、これは彼に限ったわけではない。
一緒に入社した新卒の同期たちは、少なくとも40人以上は辞めていると聞いた。
先月、入ってきた中途入社の方の顔をもう見ることはない。
もちろん、既存の社員たちはもっと辞めていく。
次は自分かもしれない。迫り来る不安。
そして、また代替品の中途入社者が入ってくる。
ここは戦場。我らは兵士。
もう、仕方ないのだろう。
ハッキリと言って、この業界は終わっている。
世の中には必要だと思う。それは綺麗事だ。
もう一度言う、ここは戦場。
必要なのは、何も感じない「鈍感さ」かもしれない。
甘えだと思ってもらって構わない。
もっと厳しい環境に身を置く人はたくさんいるはず。
それが未来に繋がる。身のためになる。それは言い訳。若いうちは苦労をしろ。みんな辛い。仕事は楽しめ。嫌なら辞めればいい。逃げるなよ。頑張れ。
痛いほど分かっている。
だけど、もう人間が壊れる瞬間を見たくない。